言葉では表現しきれないことを絵にして作品をつくる
[GIDNIUM さん / 現代アート]
2024/2/29
デジタルや手書きなどさまざまな手法を使って、現代社会の矛盾や課題をユーモアのある独創的な視覚的表現で浮き彫りにした現代アート手掛けるGIDNIUM(ギドニウム)さんをご紹介します。
ドローイング、ペイティング、デジタルグラフィックなど、さまざまな技法や素材をミックスして絵を描いています。テーマとして取り扱っているのは、社会的な問題や疑問、常識や価値の再定義などですが、直接的な表現をなるべくしないよう芸術だからこそできる表現で、端的でない奥深い作品となるように心掛けています。
そして、作品をつくるときは興味を持ってもらえることや伝わることを優先し、まずテーマに合った技法が何かを考えるところから始めます。それが線画や油絵だったり、CGなどのデジタルだったりします。例えば、デジタルであれば光の当たり方やカメラワークも考えないといけないため、構図を紙に「書き出し」てから、実際に絵を「描く」作業に移ります。また、作品に文字を取り入れることもあるのですが、いくつもの文字を手で紙に書いて、気に入ったものをスキャニングしてテクスチャとして作品に反映します。
作品をつくるにあたっては、できるだけ社会的な問題やメディアが取り上げづらいことをテーマにしています。国内外を問わず自身の心に響く芸術家やデザイナーの作品に沢山触れ、その背景までたどってみることで、時代や問題をどう切り取っているかを学び、テーマに反映させています。そこから自分なりの表現を見出し、さまざまな技法をミックスして、言葉では表現しきれないことを絵にして作品をつくっています。
アートに興味がない人にも関心を持ってもらいたいという想いがあり、テーマ選びや表現するモチーフもいろいろな観点から考えて、人の心が動くような作品づくりを目指しています。自分の作品は社会風刺的なものが多いですが、テーマが少し過激になりそうな場合は嫌悪感を抱かせないように、例えば無彩色で表現したり、ツルッとしたテクスチャーでクールな質感にしたり、一方でポップなとっつきやすい表現をすることで、いい意味での違和感を出し、印象に残る作品づくりを心掛けています。
まず「書く」ことは、自分の考えや作品を知ってもらうための構図のようなものだと思います。自分だけのものにとどまらず、作品に触れる人やシェアしてもらえることを想像して書いています。構図を「書く」ことは、表層的な表現行為だと感じています。
一方「描く」ことは、感じたことを自由に制限なく、独自の表現に落とし込む内面的な行為だととらえています。色や表情をつけて作品に命を吹き込む、そんな感覚的な表現行為です。
創造力の源は、日々の暮らしの中で感じるストレスと誰かの役に立ちたいという想いです。現代社会は情報過多で生きづらさを感じる人もいると思います。自分の言葉では表現しきれない、そのストレスや社会の矛盾を芸術で表現できたら、そしてそれが誰かの励みや楽しみ、生きていく上での一つの選択肢になってくれたらと考えています。また、創作活動の根底にあるのは幼いころの自己体験、そして当時、アートや音楽、社会的活動を経験させてくれた母親の想いでもあるような気がしています。
photoトップメイン:羽化する前の昆虫の静止状態、4つの段階の完全変態(卵/幼虫/さなぎ/成虫)を描き出した「蛹(さなぎ)」2023 photo 01:制限のある中で自由に泳ぎ、浮遊する7人の妊婦を描いた「淵源(えんげん)」2023 photo 02:ファストファッションやAI、環境エネルギー問題など社会風刺的な内容をテーマに人の心を動かすような作品を描く。 photo 03:希望を象徴する孔雀と、破壊を象徴する蠅の対比で二面性を探求した作品「聖鳥(せいちょう)」2023 photo 04:「淵源」を表現するにあたって構図を紙に鉛筆で書いたラフスケッチ。 photo 05: CGを扱うとき、作品の表面に凹凸や溝、傷などのディティールを追加するテクスチャを考えながらつくっていく源泉となる「法線マップ」。
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