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一つとして同じ色形が存在しない、炭化した植物による黒の世界[大川 春雪 さん / いけばなからの現代アート]

一つとして同じ色形が存在しない、炭化した植物による黒の世界
[大川 春雪 さん / いけばなからの現代アート]

2025/09/24

      

いけばなとして生けた植物を、自ら炭化してモノクロームの世界をRE-CREATIONするアーティスト、大川春雪さんをご紹介します。

あなたの創作活動について教えてください

いけばなを始めて40年。その間、人の真似ではない自分の表現を追求してきました。ある時、不思議な植物「バンクシア」に出会いました。オーストラリアに自生するこの植物は、山火事の炎の刺激を受けると種子を放ち、燃え尽きた大地に新たな息吹を発芽させます。目にしたバンクシアがまさに焼け焦げている姿を見て、炭を生けようと思ったのです。いけばなとして生けた植物を廃棄せず、自ら炭化してモノクロームの世界をRE-CREATIONする。これが私の制作スタイルとなりました。

創作のアイデアは
どのように生まれてくるのでしょう?

私の制作は相手が植物のため、一つひとつ姿が異なります。そして、炭化した炭や真綿の出来上がりも、私がコントロールできることではなく、目に見えないさまざまな要因によって一つひとつ異なります。また炭化した植物は、一つとして同じ黒はありません。思いがけず生まれた素材の個性からインスピレーションを受けて、さまざまな黒の世界を制作しています。

作品を創る上で
心掛けていることを教えてください

大事にしているのは、人の真似ではないオリジナルの作品であること。お花を生けることは誰もがやっていることですが、いけばなはもちろん、炭化した素材を生けることで、まったく別の世界をつくることを心掛けています。2023年、出身地群馬県産の絹で着物を仕立てたことをきっかけに、絹を作品に取り入れたいと考え、群馬県産繭から自分で真綿を引き、自作の炭とコラボレーションした『炭をいける®︎天衣無縫シリーズ』を制作しています。

あなたにとって「かく(書く・描く)」こととは?

私にとっての理想郷を描き出すことです。谷川岳天神平でスキーをしていた時、奥に広がる谷川連峰を眺めていました。すると、空の一点から突然漆黒の雲が生まれ、ものすごいスピードで山を駆け下りて行くのです。次から次へ生まれては駆け下りるその様子を目にして、自然への畏怖を感じるとともに、この景色を描き留めておきたいと思いました。日常の中で心に響いたいろいろな瞬間を忘れないように、見落とさないように、こうして絵や文章で描き留めてきた事柄の中に、作品の出発点があると感じています。

創造力の源は何ですか?

「感動をするために行動を起こす」こと。ある時、花ばさみ1つを持って野外に出かけるとすぐに、赤い実をたくさんつけたひと枝を見つけました。さらに進むと、面白い曲がりを持った枝が2本落ちていました。そして、目の前に滝が現れました。だからそこに生けました。いくつかの偶然の出会いのみから生まれたこの風景は、「自然界に一つとして同じものがなく、「その時」を逃したら二度と同じものに出会えない」という私の創作活動の核心をついた風景です。見たことのない景色、感動した瞬間を積み重ねて、創造力の引き出しに蓄積しています。

photoトップメイン:いけばなを炭化してつくる作品「炭をいける®」。相手が植物のため一つひとつ姿が異なる。 photo1:デッサンを描いた後、とても面白い曲線を持った素材を発見したので、それを生かして制作した作品。 photo2:いけばなとして使用した植物を廃棄せず、それを炭化した素材で新たな作品につくりあげる。 photo3:自作の炭と真綿とのコラボレーション作品「炭をいける®天衣無縫」シリーズ。 photo4:記憶に残る景色を描き留める。 photo5:想像力の源となっている風景。長野にて、野外に生けた作品。

大川 春雪 さん
大川 春雪 さん
1984年いけばな草月流入門。2003年自らいけばなとして生けた植物を炭化してRE-CREATION「炭をいける」制作開始。2017年国際芸術コンペティション「アートオリンピア」入選。2018年池袋アートギャザリング「IAG AWARDS」入選。2020年「炭をいける®」商標登録 6292622号。2022年「炭をいける® AS YOU LIKE!」シリーズ 制作開始。2023年炭をいける®天衣無縫シリーズ 制作開始。2024年 第4回日本和文化グランプリ 入選。個展、グループ展多数。

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