「かくこと」は自己表現であると同時に、相手に伝える手段[華凜 -karin- さん / 前衛書道]

「かくこと」は自己表現であると同時に、相手に伝える手段
[華凜 -karin- さん / 前衛書道]

2025/04/15

      

子供の頃から親しんできた書写書道の発展形として、前衛書やアルコールインクアート、また前衛書×アルコールインクアートの融合による表現活動を行う華凜-karin-さんをご紹介します。

あなたの創作活動について教えてください

子供の頃から書写書道に親しみ、現在は書道講師を仕事としながら、自らの作品づくりとして前衛書道やアルコールインクアートといった比較的新しい分野に取り組んでいる。前衛書道の場合は、まず漢字一字を決めて、その漢字の成り立ちや意味、字体などを調べ、自分の中で作品のイメージをつくり上げていく。そのまま一気に紙に書くこともあれば、一度紙に構成を書いてから本番の作品づくりをすることもある。最近では、墨の良さを引き立てるような作品を制作しようと、文字を決めずに創作することも。アルコールインクアート単独の場合は花を描くことが多いが、書と合わせるときは書のイメージを壊さないよう、互いが引き合うような抽象的なアート作品をつくることが多い。

創作のアイデアは
どのように生まれてくるのでしょう?

例えば、夜のウォーキング。歩きながら感じる風、空を見上げると光る星や月、自転車で帰る高校生の話し声など、まわりのさまざまな現象を五感で感じるときにアイデアが浮かぶ。もう一つは、人の話。人それぞれに全く違う人生を歩んでいるからこそ、面白い。人の話を聞くことで得られるストーリーや感情を作品づくりに反映している。音楽を聴きながら制作することが多く、音楽がインスピレーションをくれることもある。

作品を創る上で
心掛けていることを教えてください

個人からの依頼でつくる作品の場合は、相手の話を聞き、意図を汲み取り、作品の中に反映させるよう、「相手意識」をもって制作している。一方、自分主体でかく作品の場合は、自分が意図していることが伝わればいいなという思いで制作している。前衛書道では、文字を読むというよりも「観る」ことを重視しているため、鑑賞者が私の意図とズレて解釈することも少なくないが、それもオールOK。感じたまま楽しんでもらえたらと考えている。

あなたにとって「かく(書く・描く)」こととは?

書写書道やアルコールインクアートを教えているので、「かくこと」は毎日している。私にとっての「かくこと」は、生活の一部であり、なくてはならないもの。そして、前衛書道や抽象的なアート作品を「かくこと」は、自己表現であると同時に、相手に伝える手段として、読んで、みて、直接分かる表現として鑑賞してもらうことを重視して表現している。

創造力の源は何ですか?

「みてくれる人がいる」ことと「新しい作品に出逢える」こと。みてくれる人がいると作品づくりに自然と力が入るので、原動力となっている。そして、それを原動力に、新しい作品に出逢うことができる。同じものは二度とつくることができない。どの作品も唯一無二の作品であることが、創作活動を辞められない理由でもある。この環境をつくってくれているすべてのモノ、コト、ヒトに感謝しながらこれからも制作していきたい。

photoトップメイン:前衛書×アルコールインクアートの作品「birth」。 photo1:墨の現象を使って宇宙に存在するすべての物事や現象を表現した「森羅万象」。 photo2:花が咲き乱れている様子を詰めた「繚乱」。 photo3:清水寺、シェーンブルン宮殿で展示予定の、作品「旅」。空を飛ぶ鳥をイメージし、藍で墨流し「雲」、前衛書「旅」を表現。 photo4:馬毛の筆を2本持って創作するプロセス。 photo5:インスピレーションの源の一つ、夜のウォーキングでの空の様子。

華凜 -karin- さん
華凜 -karin- さん
子供の頃から書写書道に親しむ。数年前から前衛書道に興味をもち、読む書ではなく、観る書、感じる書に転換。アルコールインクアートと呼ばれる流動アートもおこなう。2024年、放美展 優秀賞、徳島県展 準特選を受賞。清水寺 グループ展示を開催。2025年、海外に出展。シェーンブルン宮殿やユネスコ本部内でのグループ展に参加。

この記事をシェアする

  
かく、がスキ 公式SNS
TOPページへ戻る
パイロット公式サイトへ