1990年代前半は、まだ今のようにパソコンが普及していませんでした。 当時のボールペンは、軸が細くて硬いプラスチック製のものばかり。ボールペンでたくさんの書類を手書きしていた会社員など、多くの人が手や肩の痛みに悩まされていました。
パイロットは、たくさん書くことによる身体の負担を少しでも減らすために、医師とともに「ドクターグリップ」の開発を始めました。
一般的な鉛筆や当時のボールペンの軸は8ミリ程度の太さですが、手に最も負担がかからない理想的な軸の太さは、13.8ミリということが研究でわかりました。さらに、指が痛くなったりすべったりしないように、握る部分をラバー(ゴム)でおおうというアイデアが生まれました。
こんなに軸が太くてラバーが付いたボールペンはこれまでになかったので、何度も設計をやり直しました。この研究によって生まれたゴム製の握る部分「ラバーグリップ」は、今では多くのボールペンに採用されています。
1991年、ついに、長時間書いても疲れにくいボールペン「ドクターグリップ」が完成しましたが、価格は1本500円。当時は80円程のボールペンが一般的だったため受け入れてもらえるか心配しましたが、5カ月で100万本を販売し、大ヒット商品になりました。
翌1992年には学生向けにシャープペンシルを発売し、こちらも大ヒット。ドクターグリップのシャープペンシルは、今でもたくさんの人が使っています。