万年筆で年賀状を書こう
お気に入りの万年筆を手に入れたものの、日常ではあまり使っていないという人もいるかもしれません。年賀状を書く季節は、万年筆と親しむ良い機会です。最近はパソコンで年賀状を作るという人が多くなりましたが、相手の近況を想像しながら丁寧に書かれた1枚のはがきは、心のこもったコミュニケーションツールになります。そこで今回は、一度覚えれば日常にも役立つ宛名書きのこつを紹介します。
年賀状の書き方にはこつがあった!必ず役立つ、 年賀状の書き方を教えます。
宛名の一文字目は「郵便はがき」の文字の「便」の真下がハガキの中央となるので、"イ"と"ロ"の交わった位置を目安とする。
まず宛名の書き出し位置と文字の大きさを決め、①宛名 ②宛先 ③差出人名 ④差出人住所 の順序で書いていく。①宛名の文字を最も大きく書き、以下、②、③、④の順に字粒を小さくする。
まず宛名の一文字目と「様」の位置を配分してから書き始めると全体のバランスが整う。姓と名、名と「様」の間はやや広めに空ける。宛名は相手に敬意を表するつもりで、最も大きな文字で書く。
宛先が2行になる場合は建物名か番地で改行し、行頭を揃える。2行目の文字はやや小さめに。これが全体の見た目を整え、上手な印象を与えるポイント。1行で書ける場合は宛先をやや中央に寄せる。
差出人の名前を書いてから差出人の住所を最後に書く。
料額印面の位置を基準にして、左の余白にはみ出さないように名前を書く。残ったスペースを住所表記に配分するように計算するときれいに書き上げることができる。住所が2行になる場合は改行して行頭を揃え、2行目を小さめの文字で。郵便番号も忘れずに記入する。
はがきの上下左右や文字間に美しい余白を作ることで、整った文面を作ることが出来る。
こつを知れば文字が変わった!宛名書き実践講座
パイロットコーポレーションの会議室に集まった生徒達。社会人としてまた主婦として、今年の年賀状こそ手書きで上手に書きたいと考えています。『年賀状の宛名書き』というテーマでパイロットのペン習字通信講座でも講師を務める桜井紀子先生に講義をしていただきました。まずは自己流でチャレンジ
まずは受講生が先生の説明なしで宛名書きをし、これを教材として添削を行いました。
「何を良しとするか」が分からない状態でペンを運ぶ受講生。改行の位置や漢数字の使い方、差出人氏名を書く位置やバランスの取り方など、戸惑いながら自己流で書き上げました。
書き上がった作品はボードに張り出され、先生に細部の指導をしていただきます。
難しかったのはどこですか?
まず先生が受講生に聞きました。「難しかったところはどこですか?」生徒の疑問は、宛名の文字の大きさや、住所氏名をどんなバランスで書いたらよいか、長い住所をどこで2行に分けるのか、番地などの数字の書き方は…など。
その後、先生から指導が入ります。上手な宛名書きのポイントはどこにあるのでしょうか。
宛名書きのこつは…
上手な宛名書きのこつ、それは文字の大きさにありました。そのために書く順番とレイアウトを考えていきます。
まず始めに宛名を書きます。当然宛先から書き始めるもの、と思っていた受講生には目からうろこの指摘でした。宛名は大きくしっかりと。「様」は上に書いた宛名をどっしりと受け止めるイメージで、懐の広い字形を心がけます。「様」の位置は固定(先取り)しておくことで、宛名の字数に左右され上がったり下がったりすることがなくなり、見栄えが良くなります。受講生全員に共通していたことは、「様」の位置が上にありすぎることでした。中途半端な位置で書き終わっていると、文面全体に不安定な印象を与えてしまいます。
次に宛先を書きます。宛先の文字の大きさは、宛名の字粒の大きさを基準にしてやや小さめに。ここに大きなポイントがあるのです。こうすることで無理なく自然に字粒の大きさをコントロールできるからです。住所が2行になる場合には建物名や番地で改行して2行目の文字をさらに小さく書き、行頭を揃えます。
最後に書くのは差出人の名前、そして住所。住所が長い場合、苦心して住所を書いているうちに名前を書くスペースがなくなってしまう、ということがあります。これを防ぐためには、まず名前を先に書いてしまうことがポイント。バランスよく名前を書いた後に、残ったスペースを住所のために配分します。住所が長い場合は建物名か番地で改行して2行に分け、行頭を揃えます。番地を算用数字で書く場合は、「丁目」にあたる数字のみを漢数字で表記することもできます。
さて、先生の指導を経て、受講生の作品はどう変わったのでしょうか…。
講師を務めてくれた桜井先生。パイロットの『ペン習字通信講座』の講師としてもおなじみ。
社会人は人前で文字を書く機会も多い。はがきの書き方を知ることも大事なマナーのひとつ。
受講生のはがきを拡大コピーして添削。自分なりに工夫をしているものの、全体の印象が不安定。
書き文字の美しさは、活字とは違う強弱のバランスにある。
手づくりのテンプレートで、バランス感覚を掴む。
活字と同じ形の「はらい」を書こうと思わず、下半分を「ホ」の字形にするとバランスが整う。
こんなに変わった!
授業前後の作品比較。
はじめは文字のバランスに苦労していた生徒さんも、授業後は迷わずに文字を書く事ができました。
万年筆には選ぶ楽しみ、書く喜びがあります。
桜井先生が語る、万年筆の魅力
昔は中学の入学祝いなどには万年筆を贈られたものです。金色のペン先を眺めながらあらたまった気持ちで文字を書く時間は気分の良いものでしたね。正式な手紙は黒インキの万年筆で白い紙に書くことが常識でした。最近はそうした習慣もすたれてきましたが、良い万年筆を持つことには今でも一種のステイタス感があると思います。万年筆の魅力は、手入れをしながら使うこと、使い捨ての道具ではないことにあると思います。日常には使い捨てのボールペンを使っている人であっても、胸ポケットにさりげなく万年筆が挿してあると「実はこだわりや気遣いのある方なんだな」と分かります。万年筆には、自分の手に合った太さや重さ、線の太さなどを吟味しながら選ぶ楽しみ、使う喜びがあります。文字に変に格好つけようとせず、あるがままの自分でゆっくりと丁寧に意味をかみしめながら書くことが大事。何といっても書き文字はその人の心をあたたかく伝えてくれるもの。そのための一本を大切に使いたいものですね。