まさかの1秒速乾! 「瞬筆」誕生の物語。

開発ストーリー

2021/09/10

まさかの1秒速乾! 「瞬筆」誕生の物語。

筆跡が1秒で乾く!という新機能を備えた速乾筆ペン「瞬筆」。その製品化にあたっては、インキの基礎研究に始まって、開発段階での試行錯誤やプロモーション企画での工夫など、舞台裏でさまざまな物語がありました。今回は速乾筆ペン「瞬筆」が、筆ペン市場に躍り出るまでの道のりをお話します。※当社調べ

一発勝負の場面で、心強い味方になる!
「これまでにない速乾筆ペンをつくろう」

 硯(すずり)で墨をすって毛筆で文字を書く...。筆、硯、墨、紙は「文房四宝」といわれ、日本の古式ゆかしい文具の原点といえるアイテムですが、皆さんはいま、筆と墨で文字を書く機会はどのくらいありますか?

 年賀状や手紙、祝儀袋の表書きなどを書くシーンでは、サッと取り出してすぐに書ける「筆ペン」を使っている方が多いのではないでしょうか。筆ペンの手軽さはいまやすっかり日本文化に溶け込んでいます。とはいえ、特に縦書きの文章を書くときは手が汚れたり筆跡が擦れたりするため、墨(インキ)が乾くまでしばらく待たなくてはならないなど、普通の筆記具と比べて少々不便さが伴うもの。スマートフォンやパソコンでのコミュニケーションに慣れた現代の人々にとっては、「スピード感のない筆記具」という印象も否めません。筆ペンというカテゴリーは筆記具マーケットでジリジリと人気が落ちてきていました。

 パイロットとしても毛筆文化をもっと気軽に日々の生活に取り入れてほしいという想いで、「これまでにない筆ペンをつくろう! 」と新製品を開発することとなったのです。

 ところで、皆さんは筆ペンをどうやって選んでいますか?

 新しい筆ペンの開発がスタートした2017年当時、ほとんどの店頭で筆ペンは試し書きができない状況でした。これでは実際に買って使ってみるまで、書き味などの商品特長は分かりません。

 担当者は考えました。「これまで以上に書きやすさを追求しました!」というだけでは他の筆ペンとの違いは伝わらない。まったく新しいものをつくるなら、試し書きをしなくても一発で魅力が伝わるような、思わず手に取りたくなるようなインパクトのある新機能が必要ではないだろうか...。

 そもそも筆ペンで書く場面といえば、ハガキの宛名書きや祝儀袋の表書きなど、失敗が許されない本番一発勝負の緊張感が伴うものです。せっかく文字が上手に書けても、乾かないうちに汚してしまっては台無しです。筆ペンユーザーからも「書くときに筆跡の擦れや手の汚れなどが気になる」と不満の声があがっていました。

 インキが速く乾けば手や紙に汚れがつかない。そんな「あっという間に乾くインキ」を開発すれば、筆ペンを敬遠していた人にももっと気軽に使ってもらえるに違いない、という発想で新製品企画がスタートしたのです。


02story003_a_8802.jpg 02story003_b_8679.jpg

「あっという間に乾くインキ」の最終形が決定するまでには、数十種類の試作インキをいろいろな紙に書いて、試験が重ねられた。

 
02story003_2_image.jpg

幾多ものハードルを越えて
瞬く間に乾く! 新ブランド「瞬筆」誕生。

 インキ開発部門ではさっそく「速乾インキ」の基礎研究をスタートさせましたが、速く乾くということは、裏をかえせば筆の穂先もすぐに乾燥してしまうということ。また、インキを紙に素早く染み込ませることで速乾性を実現しようとすると、どうしても裏写りする可能性が出てしまいます。

 まったく新しいインキですから、そう簡単には完成しません。多岐にわたる課題をクリアするためには、ギリギリのバランスを保ったインキの配合が必要です。開発者たちは何度も試作を繰り返し、翌年の2018年秋、試行錯誤の末に1秒で筆跡が乾く「速乾インキ」を搭載した筆ペンのプロトタイプをつくり上げることに成功しました。

 数日後、「速乾筆ペン」の試作品がパイロットの社内でお披露目されて、試し書き会が行われました。はじめての「1秒速乾」を体験した社員たちの評価は想像以上に好感触で、担当者はひとまず安堵しました。

 とはいえ本番生産が始まる直前まで、インキ開発部門では新しい「速乾インキ」の検証を続けました。昔と違って現代の筆ペンは、さまざまな用途や多様な紙に書くことが想像されるからです。祝儀袋、ハガキはもちろん、ノート、手帳や付箋に至るまで、筆ペンが使われそうなシーンを想定して、数十種類のインキをつくってテストが繰り返されました。

 こうして検証に検証を重ねることで、自信を持って世に送り出せる「速乾インキ」が遂に完成したのです。


02story003_c_8794.jpg 02story003_d_8511.jpg

左:穂先は本物の筆の書き心地に近い「本格毛筆」と、サインペンのようにサッと気軽に書ける「小筆」の2タイプを展開。それぞれに、中字・細字、かため・やわらかめを用意。右:多様なデザイン案から、ペン軸の色は藍色を採用。


 企画部門では、独自開発の「速乾インキ」搭載の新製品の魅力がひと目でパッと伝わる新ブランドとして打ち出すべく、印象的なネーミングが考案されました。幾多ものアイデアを出し合った結果、「筆ペンであること」と「瞬間で乾くこと」を直感的にイメージできる「瞬筆(しゅんぴつ)」と命名。

 そしてペン軸は、これまでの筆ペンにない色にしようと、日本の伝統色から藍色が採用されました。小筆のキャップには、銀色の文字を刻印して上質感を演出。また、あっという間に筆跡が乾く「速乾」という特長にフォーカスして制作されたPRムービーは、インパクトのあるビジュアルで若手世代にも響くキャッチーな仕上がりとなりました。

 こうして企画スタートから約2年の歳月を経た2019年の夏、さまざまなこだわりが詰まった、1秒で乾く筆ペン「瞬筆」が世に誕生したのです。


02story003_e1.jpg 02story003_e2.jpg

PRムービーのひとつ、速乾筆ペン【瞬筆】「まさかの1秒速乾①アジ」編。筆ペン離れが進む若手世代にも理解しやすい動画は好評を得た。

02story003_3_2692_cut.jpg

新たなミッションは、顔料インキの「瞬筆」。
雨に濡れてもにじみにくい、速乾筆ペンを開発!

 いつの時代も、新製品の完成はゴールではなく、次なるチャレンジの始まりです。「瞬筆」も例にもれず、発売から間もなく新たな目標が掲げられました。

 それは、水や雨に濡れてもにじみにくい「顔料インキの速乾筆ペン」の開発。筆ペンユーザーからあがっていたもう一つの不満点=「水に濡れるとにじむ」という課題を、耐水性に優れた顔料インキによってクリアする開発ミッションです。

 そもそも書道で使う墨汁は顔料タイプで、耐水性はもちろん耐光性にも優れ、時間が経っても変色しにくく、くっきり黒い文字を書くことができるという特長があります。手軽に書ける筆ペンが登場した当初は墨汁に似た性質を持つ顔料インキが主流でしたが、染料インキの普及によって現在では筆ペンの約7割が染料インキだといいます。

 とはいえ、「雨に濡れることを心配したくない」「墨汁に近い色で書きたい」「筆ペンの下書きの上に絵の具で着彩したい」など、筆ペンを本格的に使いたい人を対象とした「顔料インキの速乾筆ペン」の開発は必須だと考えたのです。

 インキ開発部門では再び試行錯誤の日々が始まりました。水に溶ける染料は紙に染み込ませるのが比較的容易です。しかし、粒子タイプの顔料の場合、紙の表面に粒子がとどまってしまって肝心の速乾性が失われてしまいます。そこで粒子を小さくして速乾性を上げようと試みました。すると速乾性は実現できましたが、今度は色が薄くなり顔料の良さが損なわれてしまいます。

 また、本格毛筆タイプのやわらかな穂先にインキをとどまらせておくことも大きな障壁となって開発者たちの前に立ちはだかりました。「穂先では乾かないけれど、紙の上ではすぐに乾く」という一見相反する課題を同時に実現しなければならなかったのです。

 「速乾性とインキ濃度」のベストなバランスを追い求めて、顔料や溶剤などさまざまな材料を配合しながら試作したインキは、気づくと300種類を超えていました。


02story003_f_2052.jpg

顔料インキは水や雨に濡れてもにじみにくく、宛名書きにも便利。墨汁に近い黒色でくっきりとした本格的な毛筆感覚で文字を書くことができる。


 こうして染料インキの発売から2年後の2021年7月、水に濡れてもにじみにくく、筆ペン市場でNo.1の黒い筆跡を実現した「瞬筆 顔料インキ」発売に至ったのです。※当社調べ

 筆ペン離れが叫ばれる時代ではありますが、幅広い世代の人々にもっと使ってほしい。そんな想いと共に、「瞬筆」はこれからも進化し続けます。


02story003_g_2690.jpg

左から「小筆 染料インキ」、「小筆 顔料インキ(二役)」。「本格毛筆 顔料インキ」、「本格毛筆 染料インキ」の4種類を中心に展開する、瞬筆シリーズの基本ラインナップ。

  • 1

  • 2

  • 3

この記事をシェアする

  
TOPページへ戻る パイロット公式サイトへ