2021/10/25
油性、水性、ゲル、顔料、染料...、ボールペンのインキってどう違う?
インキの種類は、一体いくつあるの?
前回の 「かく、を学ぶ」では、ボールペンの仕組みを学びましたが、今回はボールペンの「インキ」に注目してみましょう。
インキの種類といえば、油性や水性、またはゲル? それとも顔料、染料? など、さまざまなキーワードが思い浮かびますが、一体どんな意味を表しているのでしょうか?
1960年代の日本で実用的なボールペンが普及し始めた頃までは油性インキだけでしたが、半世紀以上の時が流れる間に、実にたくさんの種類のインキが登場しました。ここでは、パイロットでつくっているボールペンを例に挙げてご説明します。
ボールペンのインキはいろいろな材料を混ぜてつくるのですが、まずベース素材となる溶剤は大きく分けると、「油」※ と「水」の2つ。「油性ボールペン」「水性ボールペン」という分類は、もう皆さんもお馴染みですよね。
※正確には「アルコール溶剤」
ところで、よく目にする「ゲルインキ」とは何なのか気になりますよね。実はパイロットの消せるボールペン「フリクション」シリーズや「ジュース」「ジュースアップ」などもゲルインキボールペンです。ゲルインキは、水にゲル化剤を混ぜ、プルプルしたゲル状に固めたものをベースとしています。
※世の中には、油ベースにゲル化剤を混ぜた油性のゲルインキも存在します。
ゲルには、力を加えることでサラサラとした液状になるという特性があります。その性質をうまく活用したのがゲルインキボールペンです。レフィルの中でインキはプルプルしたゲル状ですが、ボールが回転する力で液状となって、スルスルと流れ出てなめらかに書くことができるという仕組み。おまけに書いた後は、すぐにゲル状に戻るので、筆跡がにじみにくいという性質があります。
このゲルインキは、なめらかに書ける水性インキと、筆跡がにじみにくい油性インキのいいとこ取りをしたインキと言えるかもしれませんね。
さて、ここまでインキのベース素材が、ドロッとしているか、プルプルか、シャバシャバかという「状態」についてご説明してきました。でも、ボールペンのインキとしては、肝心の何かが足りませんね? そうです、このままでは、紙の上に書いても何も見えません。
次のページでは、インキに必要な「色のもと」について解説していきましょう。
インキに必要な「色のもと」って?
カラフルなボールペンインキ、その「色のもと」って?
ボールペンで紙に書いた時、線が見えるようになるために必要なのは…、そう、「色のもと」です。
この「色のもと」には、「染料」と「顔料」という2つのタイプがあります。ベース素材に混ぜて、溶けるのが染料、溶けないのが顔料です。
染料は水と仲良しなので、ベース素材そのものに「色のもと」が完全に溶けた状態になります。だから、紙に書くとインキが染み込んで、発色が鮮やかで濃く書けるという特性があります。インキがサラサラしているから書き味もなめらか。水に溶けるので、いろいろな色を混ぜて新しい色をつくりやすいというメリットもあります。でも水と仲良しということは、水に濡れると染料が溶け出して筆跡がにじんでしまうというデメリットもあります。
一方、顔料は色の粒子がベース素材の中に溶けずにまんべんなく混ざっている状態です。紙に書いて乾いてしまうと、色のもとが粒子の状態で紙に定着するので、水に濡れてもにじまず、しかも光によって色あせしにくいので、長く保存しておきたいものを書くのに適しています。
ちなみに、染料は洋服など布を染める材料として、顔料はペンキや化粧品などの材料として使われているんですよ。
ボールペンインキの種類には「3タイプのベース素材」と「2つの色のもと」があって、その組み合わせによって、それぞれに特徴があることがお分かりいただけたでしょうか。いつも使っているボールペンはどのタイプでしたか?
複写伝票などにしっかり書きたい時や雨に濡れてもにじまないようにしたい宛名書きには油性ボールペンを、手紙やノートをカラフルに楽しく書くには水性顔料ゲルインキボールペンを、さらさらと万年筆のように筆を進めたい時には水性ボールペンを…、など使い道にあわせて、最適なボールペンを選んでみてください。
〈関連記事を読む〉
〉〉〉ペンの先端に秘められた「ボールペン」という名前の由来。
〉〉〉ボールペン「チップ」の形で書き味はどう違う?
<
1
2
>
この記事をシェアする