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「楽しいから始まる学び」をコンセプトとして
活躍する東大発の知識集団・QuizKnockから、
伊沢拓司さんと河村拓哉さんが登場!
Webメディア・QuizKnockの発足時から
記事制作を担い、
書籍の執筆や各種媒体での連載なども
手掛けてきた2人が
「文章を書くこと」について語り合います。
伊沢の「作家業」といえば『クイズ思考の解体』だよね。500ページくらいあって、重量感がすごい。
2年半かかっちゃったけど、なんとか出せたね。そういう河村さんは短編小説を書いてたよね?
正確には「ショートショート」といって、もっと短いものだけど。「冷たい牢獄より」という作品を書いたね。
伊沢はいつも忙しそうだけど、「低倍速プレイリスト」を連載したり、かなりの頻度で文章を書いてるよね。いつ作業してるの?
「低倍速プレイリスト」...Webメディア・QuizKnockで伊沢が執筆している週刊連載。音楽好きの伊沢が、さまざまな楽曲の「ある一部分」に着目してあれこれ言うエッセイ。倍速視聴が浸透している現代において、あえて"ゆっくり"考察と妄想を広げていく。
僕は文章のお題に合わせてアプローチを変えるんだけど、「低倍速プレイリスト」は毎日毎日、ちょっとずつアイディアを積み上げて、何度も書き直して仕上げてる感じかな。
そうなんだ。僕は逆に、まとまった時間で一気に書いちゃうことが多いな。
特にフィクションを書くときは、スイッチを切り替えて「創作するぞ!」っていう気持ちになるまでに時間がかかるし、一度筆が乗り出したら止まりたくない。間隔を空けると、それまで書いていた文章に違和感を覚えちゃうんだよね。
なるほどね。僕の場合、「書く」と言ってもずっと机に向かっているわけじゃなくて、実際に書いたり表現を直したりしている時間は3割くらいしかないんだよね。
残りはノートとかメモでネタの整理をしている時間が3割、自分の書いたものに「読んだ人がどんな反応をするか」を考えている時間が4割くらい。
確かに、書く前の準備って大切だよね。構想を考えずにとりあえず「なんか良さげな文章を書こう!」と思って書き始めると、全体として何を伝えたいかがわからなくなっちゃう。
僕と河村さん、執筆のペース配分は違うのに、「事前に考えてアイデアを膨らませてから、書き進めてまとめていく」という段取りは一緒なんだ。面白いね。河村さんはメモとか取っているの?
僕は最近「書き散らし期」に入っていて......
「書き散らし期」!?
そうそう、ルーズリーフに思いつくままいろんなことを書いていくの。
このとき書いていた『冷たい牢獄より』は「黒猫を飼い始めた。」という一文から始めるように決まっていたんだけど、とりあえず「くろねこ」ってひらがなにして眺めるとか、「黒猫」だから黒を見てみるとか......
「書き散らし」ていって、アイデアが浮かぶのをじっと待つってことか。こうしてみると、2人とも「頭からアイデアが出てきた瞬間を逃さない」みたいな意識を強く持ってるのかもね。
小説とか連載記事の執筆って多くの人にはあまり馴染みがないかもしれないけど、もっと身近な、例えば学校の課題はどう書いてた? 読書感想文とかはみんなやってると思うんだよね。
あーあったね。僕は読書感想文、結構苦労してたかな。目的がきっちり設定されてないのが難しくて。
例えば宣伝用の書評なら「本を買ってください!」という明確なメッセージを込められるけど、読書感想文にはそれがなくて、まず何を書けばいいかがわかりづらい。
裏を返せば、「読書感想文を読んだ人にどうなってほしいか」っていう目的を考えると、割と楽に書けると思うよ。
確かに、「友達にちょっとドヤ顔で本をおすすめする」みたいなテンションで取り組むと、結構いい感想文が書けるよね。
「俺はこの本の、こんな面白ポイントに気づいたぜ!」って感じね。
そうそう! 緻密さが求められる研究論文とかと違って、感想文は本の中で重点的に読むところと、飛ばし気味に読むところを選べるんだよね。読んでいく中で「ここ面白いな」っていう1箇所に注目するだけでも、内容の濃い文章が書ける。
「全部に注目しなくてもいい」と思っていれば、本と向き合うのもだいぶ楽になるんじゃないかな。
それに、「感想文を書こう」って意識を持っておくことで、面白い部分を読むときの集中力が上がるよね。
僕は中学の卒業文集で新渡戸稲造の『武士道』というなかなか難しい本の感想文を書いたんだけど、そんなことが頭にあったから「ハラキリ」の文化についてうまく考えを整理できた気がするな。
読書感想文に比べると、大学生のレポートとかはそんなに自由度が高くないよね。その分取りかかりやすいとも言える。
テーマを決めて参考資料を集めたら、何を書くか自然と定まってくることが多いと思う。
レポートは論理的な文章だから、感想文以上に内容やターゲットをしっかり決めてから書いたほうがいいね。字数制限とかもあるし。
レポートには「上手に書くための型」みたいなのがあって、それを学べる本も大学の図書館や生協に置いてあるはず。多少時間がかかっても、初めのうちは「型」を守って取り組むのがいいと思う!
「自分の考えを文章にする」って、いいことがいっぱいあると思うんだよね。ある時点での自分の考えを書き残しておけば、後になって振り返ることができるし、誰かほかの人に見せて感想をもらうこともできる。
頭の中にあるものを文章の形にすることで、成長やアップデートの機会が得られるよね。
書くことによって初めて「自分ってこんなこと思ってたんだ」と気づくこともあるよね、「自分を見つめ直す」みたいな。
僕は絵も描けないし作曲もできないけど、文字は書ける。そういう意味では、自分を表現することにおいて「書くこと」って特別な才能を持っていなくても始められる、一番身近なツールだよね。
最初は自分の文章に納得できなくても、短い文章から取り組んでいけば、いつか自信が持てるようになると思うな。
僕らが好きなクイズも「書くこと」の延長にある気がする。
特に早押しクイズの問題って、「文章を読んで(聞いて)、先読みする」力が問われるよね。だから文章の「行き先」を考えるのが得意な人は強い。
僕は文章を書くこととクイズを作ることって、結構似てると思ってる。「解答者にとってわかりやすい言葉を選ぶように」とか「適切に実力を測れるように」とか気をつけながら問題を考えることって、「文章を書くときに相手の反応を考える」のと同じだよね。
要するに、文章であれクイズであれ「読者目線で考える」のが大事ってことだよね。
コツがわかってくると、自分の書いた文章を読んだ人に思った通りのリアクションをもらえたりして楽しい。
「読者目線」が身についてたからか、一時期全然クイズの勉強してなかったのに、文章を書きまくってたら強くなったもん。
そんなことがあったんだ! 文章を書くことが好きだったり、頑張ろうと思っている人はクイズへの適性があるのかもね。挑戦してくれたら、クイズの世界がもっと賑やかになりそう!
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