独自開発のインキの成分に、その秘密があります。
パイロットの消せるボールペン「フリクション」は、それまで消せないはずだったボールペンの常識を覆し、世界的なヒット商品になりました。
「フリクション」は、書いた文字を専用ラバーでこすることで消せますが、このインキが消える秘密は、このボールペンに使われている特殊な「フリクションインキ」にあります。
「フリクションインキ」は、60度以上で消え始め、65度になると無色になります。マイナス10度以下になるともとの色が復元し始め、マイナス20度になると完全に色が戻るという特性をもっています。
インキの中には特殊なマイクロカプセルが入っていて、その小さなカプセルの中には、色のもと、発色させる成分、消す成分の3つが入っています。このカプセル内の3つの成分は、温度によって組み合わせが変化するのです。
紙に書いたときは「A:色のもと(発色剤)」と「B:発色させる成分」は手をつなぎあっていて、インキの色が見えている状態になります。このとき「C:消す成分(変色温度調整剤)」は眠っています。ところが、専用ラバーでこすって熱くなると(60度以上)、眠っていた「C:消す成分」が目を覚まし、今度は「B:発色させる成分」と手をつなぎあうことで発色が消え(65度)、「A:色のもと」は働かなくなります。つまり、インキの色が見えない状態になるのです。
温度による変化なので、逆もあります。消えてしまったインキの色は、ものすごく冷たい状態(マイナス10度以下)になると、また成分の組み合わせが変わり、消えていたインキの色が現れ始め、マイナス20度で色が戻ります。
一度色が戻れば、温かい部屋へ持ちこんでもインキの色はそのまま。またこすって60度以上になると再び消え始め、65度で完全に消えます。消えた上には別の字を書くこともでき、繰り返し書いたり消したりできるのが「フリクションインキ」のすごいところです。
世界的なヒット商品となった「フリクション」シリーズには、ボールペン以外にもサインペン、スタンプなどたくさんの種類があります。「フリクション」が活躍できるシーンはいろいろありそうですね。