「かく」ことの心地よさを探しながら、遊び続けている感覚
[nenne さん / イラスト]
2024/10/16
日常の中にある小さなときめきや笑顔になるアイテム切り取って、やさしいイラストを描くnenneさんをご紹介します。
「ゆるくて、柔らかくて、そこにちょっとのユーモアを。」作品を創る時にわたしが意識していることです。主な作品はイラストレーション。日常の中にある小さなときめきや笑顔になるアイテムを切り取って、デジタルでイラストを描いています。幼い頃からずっと絵を描くことが大好きで、ノートの端、手帳の隅にちょこちょこと生み出された、わたしだけの小さな世界がありました。描く世界が広がったのは、子どもが生まれて描き始めた育児絵日記をSNSに投稿するようになってから。そこから描く楽しみがさらに広がって、誰かのために描く喜びを知り、今の仕事に繋がりました。育児絵日記を描く中で、絵を描くように字をかく手描き文字の楽しさにも初めて気づき、イラストや図形を組み合わせたような手描き文字の作品も大切にしています。
自分の中にある二つの「好き」を大切にしています。一つ目は、できるだけささやかで日常に溢れているようなときめき。それはきっと、わたしだけが感じる特別な「好き」ではないから、誰かと共感できる「好き」を日常の中に見つけて創作のヒントにしています。二つ目は、ふいに訪れる自分の中の新しい感覚や発見。大抵それはとても些細なことで、小さな気づきから広がる考察や思考の断片です。すぐに書き留めないと次の瞬間には忘れてしまいそうな日々のカケラを、スマホのメモ機能に書き残して少しずつコレクションしておくと、後から広げた時、宝箱を開けたような気持ちになります。そこから度々ヒントをもらっています。
自分の「好き」を大切に、創作が楽しいものであること。そのためにインプットとアウトプットのバランスを大切にしています。自分が見たこと、経験したこと、感じたことからインスピレーションを受けて創作をするので、アウトプットがうまくいかないときはインプットが不足している場合が多いです。映画が好きで、心がカラカラになっている時は夜な夜な映画を観ます。時々も本も読んだり、稀に漫画も読んだり。心が潤うと描きたい気持ちが自然とまた湧き上がってきて、筆が進み出します。作品創りはずっと楽しいものであってほしいから、手が動き出すのをのんびり待ちます。とはいえ仕事で描く場合はそういうわけにもいかないので、産みの苦しみと向き合わなければいけないことも多いです。そこもまたきっといいバランスなのでしょう。
イラストレーションも手描き文字も、「かく」ことは、わたしの創作活動の原点です。元々かなり筆圧が弱く、また左利きなこともあって、学生時代は筆記具を厳選して使っていました。濃い鉛筆、左手でもインクの出やすいボールペンなど。現在かく作業はデジタルとなり、わたしにとって「かく」ことのハードルがさらに下がったように感じます。思いついたアイデアは、紙よりもタブレットに手描きで。そんな生活を5年ほど続けていたら、今度はアナログのテイストを求めてしまうのが不思議なところ。最近は、鉛筆や絵の具もまた手に取り始めました。「かく」ことの心地よさをずっと探しながら、遊び続けているような感覚です。
創ることが好きで、創ったものを見るのも好き。ただそれだけ。よいものが創れると嬉しくて、ずーっとそれを見てしまう。時々それを誰かに見せたくなって、「いいね」って言ってもらえるともっと嬉しくなる。幼い頃からその繰り返しなんだと思います。それはイラストに限ったことではなく、デザインも、文章も、同じ(時々陶芸や、粘土細工や、編み物も)。「まだまだダメだ」「なんであの人みたいにできないんだ」と思う気持ちももちろんあるんですが、やっぱり「楽しい!」が優先しないと30年もずっと続けてこられない。わたしは、自分が楽しいと感じることしかしないんです。昔から。「楽しい!」「これいいでしょ?」「見てみて!」そんな子どもみたいなわたしが、ずっと心の中で創りたい気持ちを育て続けてくれています。
photoトップメイン:物語に没入する、わたしだけの時間、もう明け方。」 photo1:SNSに投稿している育児日記より「息子のスイミング事情」。 photo2: 2024年2月カレンダー用イラスト「森のティータイム」。 photo3:「ノノハナpark」という空想マルシェのロゴをデザインし、カードのモックアップを制作。 photo4:いろいろな犬の写真を見ながらゆるスケッチ。自分の好みのデフォルメ感とタッチを模索。 photo5:ナイトキャップを被る3羽のペンギンを石粉粘土で制作。粘土遊びの中で生まれた作品から、新しい表現の可能性を発見。
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