人の「こころ」が動くきっかけになるような映画をつくりたい
[柳 明日菜さん / 映画]
2024/08/29
現役女子高生として初めて脚本・監督を手がけた映画作品「レイニーブルー」。自身が演出・主演も務めながらプロの映画人や地域も巻き込んで製作に力を注ぐ柳明日菜(やなぎ あすな)さんをご紹介します。
映画初監督・脚本作品となる「レイニーブルー」を製作しています。企画をスタートしたのは高校3年のとき。映画をつくろうと思い立ったのは、自分自身を変えたいという思いからでした。今日、様々な理由で学校に行けない子どもたちがいて、その数は年々増加している。大人顔色を伺い、親の期待に応えよう、友達に気に入られようと、いつのまにか考える力や判断力を失ってしまったり、人の評価が不安で好きなことを隠したり、本音で話が出来なかったり、心を守れなくなってしまう子たち。
私自身もふと、生きづらさみたいなものを感じたことがあります。社会のレールに乗って恵まれて生きてきて、学校生活はめちゃくちゃ楽しかったけど、あれ? 自分って何ができるのだろう? 将来の夢はこれでいいのか? 客観的に見ると何も持ってない自分に不安しかなく、初めて人生に疑問を持ちました。他人軸ではなく自分軸で生きることの意味を、私、柳明日菜が大好きな作品創りで伝えたい!!「好きなことを好きだと大きな声で言える!」「やりたいことの為に、まずは動いてみる!」「誤解されても批判されても、やりたいことを突き通す!」。誰しもはつくれない「映画」というワクワクした未知数のもので、人の「こころ」を動かす。そして、「何をしたいのか」を考えて行動してもらうきかっけをつくりたいと思いました。「未来を担う私たちへのYELLとして、この映画を完成させたい」、そんな思いで映画づくりに挑んでいます。
「『今』しか体感できないこの感情や葛藤を作品にして残したい」、創作活動を通して「自分を変えたい」、「人を変えたい」、「地域や社会を変えたい」、「0を1にしたい」が原動力。今回の映画製作では、オーディションやクラウドファンディング、プロの映画人参画による撮影、ロケ地マップ製作などで地域とコラボし、地域創生に貢献するなど反響を生みました。プロジェクトを通して、きっかけがあれば人が集って自分もまわりも変わり、それが循環して人口5000人の小さな地域が変わることを肌で体感できたのです。
高校時代から脚本を書き続け、演劇と映画を含めると、これまでに10本以上の作品を書いてきました。創作をしない日はほとんどありません。世界中の作品をたくさん見て、これまでにお世話になってきた監督に刺激を受けながら、「日常生活の些細で小さな温かい感情」や「人間のあまのじゃくさ」を大切に日々脚本を書いています。
必ず書き終えること、完成させることです。小説や脚本を書く人にありがちなのが、一度書き出した作品を途中で諦めたり、別のアイデアが浮かんで次の作品を書き出したりすること。私もそう。でも、そのときに抱いた感情や伝えたいことは、他の人にはわかりません。今の気持ちを大事にして、葛藤しながらもどう表現するのか、のたうち回って最後まで書き上げることが大事だと思います。
私にとって「かく」ことは、アイデアの宝庫。映画などの企画を実現するためにプロセスを練り上げるマインドマップを書くとき、企画を練るとき、脚本案をだすとき、皆の意見を大きな用紙にまとめるときに「かく」を取り入れています。演劇に出合ってから、何でもない感情や葛藤をすごく誰かに伝えたくなったり、脚本に落とし込んで表現したい思いが湧き起こったりすると、「自分とは何か?」「何に悩んでいるのか?」をしっかり探求しながら、すぐに紙に書いてまとめるようになりました。手書きの文字は、書いた人の思いや表現したいイメージが伝わってくるような、デジタルの文字にはない力があると感じています。
高校1年のとき、高校演劇の九州地区大会で見た同世代の人たちの舞台の凄さと会場の一体感に大きな感銘を受けて、創作にのめり込んだ体験です。「何もないゼロを1に変えて、お客様に感動を与える」「それができる同世代ってかっこいい!」「1年後、私もこの舞台に立ちたい!」。そのときの躍動感のある感情は今も鮮明に覚えています。創作をしていて、辛いとき、進まないとき、苦しいときには、原点であるその感情を思い出して、創作意欲につなげています。
映画をはじめ文化や芸術など人の手で創った温かいものや思いは、人が守らないと絶え崩れていく儚いものだと、創作活動を通して学びました。これからも身近な課題を探求して、自分らしく表現をし、人の心を動かすきっかけをつくりたいです。
photoトップメイン:映画「レイニーブルー」のメインイメージビジュアル。 photo1:映画「レイニーブルー」の撮影風景。 photo2:編集のためのアイデアやメモを脚本に書き込む作業はすべて手書き。 photo3:映画の舞台となった地元・熊本県玉名市の雄大な自然をバックに、使い込んだ脚本を撮影。 photo4:実現したい舞台や映画の企画は、いつもマインドマップを作成。黒のボールペンで書いていく。 photo5:高校の演劇部に一緒に入部した同級生と。映画「レイニーブルー」にも演出部&キャストとして参加。
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