描くことは、私が生きていることの一部
[atelier*zephyr さん / 絵画]
2023/10/20
自然界の風景や生きものたちをモチーフに、絵画やイラストなどを制作するatelier*zephyrさんをご紹介します。
アクリル絵の具を使って、自然や生きものをモチーフとした絵画やイラストを描いています。生まれ育った環境が雑木林のある公園の目の前だったこともあって、子どもの頃から虫や鳥など生きものが大好きで、観察をしながら絵を描いていた体験が原点にあります。短大時代はファインアートにのめり込んで抽象的な作品をつくっていましたが、10年ほど前に、自分のコアにあるのは大好きな自然や生きものだと気づいて、原点に立ち戻りました。
身近な自然や生きものの姿や生態を、観察日記として描きとめています。例えば、窓の近くにヒヨドリが巣をつくって、雛がかえり、子育てをして巣立つまでを定点観測していると、親鳥が運んでくる獲物がはじめは小さな芋虫だったのに、巣立ちの頃には大きなヤモリになるなど、雛の成長に合わせて獲物のサイズも大きくなっていくことを発見できることも! こうした日々の積み重ねが、創作活動のアイデアソースになっています。
リアルタッチの絵を描く時は、モチーフとなる生きものに忠実に描くために、生きもののディテールや生態を観察するのはもちろん、専門書などで勉強するようにしています。最近、お子さんたちが私の作品を見て自然や動物に興味を持ったという感想をもらう機会が増えてきました。不正確な作品だと見る人が混乱するので、描く者の責任として、「自然に忠実に」を心掛けていきたいです。子どもは大人がびっくりするような視点や感性で真正面からぶつかってきてくれるので、私も真剣に作品に取り組んでいきたいなと思っています。
描くことは、私の生活の一部であり、生きていることの一部です。手描きの他、デジタルでも描いていますが、1日3、4時間は描くことに時間を費やしています。それ以外の時間も、キノコや花、鳥や虫などを観察しに出かけたり、家の中にいても窓の向こうから鳥や虫の声が聴こえると、やっていたことを横に置いて、窓の外を観察しながら日記に描きとめたりしています。例えばセミやモズの初鳴きなど季節の変化に敏感になったり、昨年と今年の同時期を比べて「ここがこう違うな」と気づいたり、一年のサイクルを意識して過ごすようになりました。
小さい頃からただただ絵を描くことが好きで、描くものを手に持たせると、部屋中に絵を描いて両親を困らせてしまうような子どもだったそうで、今もそれは変わっていません。一方で自然や生きものが好きで、庭の隅でひたすらアリをずっと見ていたり、セミ捕りをしたり......。そのふたつは今も私の主軸であり、創作活動の原動力です。宅地造成化の影響で近隣の松林がなくなり、生息する生物の種類がガラリと変わってしまいました。私の力だけではどうにもできませんが、せめて今の私にできる最大限のこととして、絵に描きとめて残していきたいと思っています。
photoトップメイン:植物、鳥、きのこなど近くの公園にある自然の姿をそのまま絵に描いた作品。 photo 01:数年前、降ったばかりの雪をルーペで観察してディテールまで表現した作品。 photo 02:その日に見た生きものやその生態などを観察日記として手帳に書き留めている。 photo 03:絵画のモチーフは身近な自然や生きものたち。 photo 04:さまざまなテクスチャーで表現できるアクリル絵の具で描く。 photo 05:絵を描くことが大好きだった子どもの頃に描いた作品。
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