0.3ミリで「濃く、なめらか」を実現! 油性ボールペン「アクロボール」、激細への挑戦。

開発ストーリー

2022/03/10

0.3ミリで「濃く、なめらか」を実現! 油性ボールペン「アクロボール」、激細への挑戦。

なめらか油性ボールペンの「アクロボール」シリーズに、2020年秋、「激細 0.3ミリ」が仲間入りしました。アクロインキの特長であるなめらかな書き味と筆跡の濃さはそのままに、0.3ミリという激細のボール径を実現した油性ボールペン「アクロボール」の開発ストーリーをお届けします。

細書きニーズが高まる油性ボールペン市場に
「アクロボール」の0.3ミリを!

 日本に実用的なボールペンが広まり始めた1960年代から時は流れ、いまやボールペン市場では細書きできる0.3ミリのボールペンがすっかり定着してきました。世界ではじめて激細0.3ミリのゲルインキボールペンが登場したのは1994年のことですが、実はそれをつくったのはパイロットです。独自開発のパイプチップを採用することによって世界初の激細0.3ミリを実現したのです。そして2000年代に入ると市場では「より細い字を書きたい」というニーズが一挙に高まって空前の細書きブームが到来。いまや0.3ミリの激細ゲルインキボールペンはごくスタンダードなラインアップとなりました。

 一方、油性ボールペンでは、よりなめらかな書き味の低粘度インキを搭載したボールペンが続々と登場し、パイロットでも2003年になめらかなインキを新たに開発し、2008年にさらに低粘度のアクロインキを搭載した「アクロボール」シリーズを発売。細書き志向がますます加速するなか、2018年春、さらなる一石を投じるべく、油性ボールペンではパイロット初となる激細0.3ミリを! と新たなチャレンジが始動したのです。


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左:企画資料や設計図などのファイルは、幾多ものトライ&エラーを重ねるたびに膨れ上がっていった。右:チップ形状は「アクロボール」1.0ミリ、0.7ミリ、0.5ミリと同様にコーン形状を採用。


 激細0.3ミリでも「アクロボール」独特のなめらかな書き味と濃い筆跡は外すことはできません。開発者たちは「この開発は困難を極めるだろう」と覚悟を決めていました。

 2018年末には試作モデルが完成したものの、アクロインキ特有の濃さとなめらかな書き味がどうしても両立できませんでした。ゲルインキでは90年代に実現できた0.3ミリが、油性ボールペンではなぜそれほどまでに難しいのでしょうか? いくら低粘度インキとはいえ、水性インキやゲルインキよりも粘度の高い油性インキ(※1)であることは大きな壁となって開発者たちの前に立ちはだかりました。

 しかもボール径が小さくなるほど、チップ先端からボールが顔をのぞかせる範囲は必然的に短くなります。直径0.3ミリボールの場合、紙までの距離はなんと毛髪1本分=0.09ミリしかありません。すると筆記時にはどうしても紙に触れたときに引っ掛かりが生じてしまい、なめらかな書き味が望めなくなってしまうのです。

この超極小のボールとチップ先端のわずかな隙間から出るインキの量のバランスによって、いかになめらかな書き味を実現できるかが開発の鍵を握っていました。そう、「アクロボール」らしい激細0.3ミリを求めて、開発チームの悪戦苦闘の日々がここから始まったのです。


※1:
ボールペンインキの種類についてはこちら 〉〉〉「ボールペンのインキ、その種類と特徴」

 
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アクロインキのメリットはそのままに
パイロット初の激細0.3ミリへの挑戦。

 超極小チップの内部構造設計に挑む開発者は試作室にこもりました。試作用の切削機と格闘しながら、幾通りものチップを製作しては顕微鏡をのぞき込み、いくつもの試作品で手書きによる性能評価を繰り返す日々が続きます。チップの試作が100種類を超えた頃には2019年も半ばを過ぎていました。

 そんな数えきれないトライ&エラーが繰り返されるなかで、開発者は水性顔料ゲルインキボールペン「ジュースアップ」の開発チームに意見を求めました。「ジュースアップ」は、0.3ミリのチップ加工という難題をクリアしたシナジーチップ採用の水性顔料ゲルインキボールペンです。

 ゲルインキでシナジーチップの「ジュースアップ」と油性インキでコーンチップの「アクロボール」、両者のインキとチップ(※2)は全く別物でありながら、「超極小の0.3ミリボールを搭載したチップ加工」という課題は共通しています。


※2:
ボールペンチップの種類についてはこちら 〉〉〉「ボールペン『チップ』の形で書き味はどう違う?」



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0.5ミリと0.3ミリの差はわずかコンマ2ミリと目視では確認できないほどの違いでありながら、実際図にして比べると予想以上に大きさが違うことに驚く。


 「ジュースアップ」のチップ加工方法に大きなヒントを得た開発者は、ペン先の加工精度をさらに上げ、先端形状とチップ内部でボールと触れる面の形状をナノレベルで調整しました。そうすることによって、激細のペン先が紙に触れたときの引っ掛かりを少なくした上に、ボールの回転をよりなめらかにし、さらにはわずかな隙間からのインキの出る量を大幅に増やすことに成功したのです。

 「よし、この書き味や筆跡の濃さなら、納得してもらえるに違いない」

 そして、複数の試作モデルを携えて社内での商品プレゼンテーションに挑んだのです。

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いくつもの難関をクリア!
しかし、書き味と濃さの追求はまだまだ続いた。

 数々の壁を乗り越えて、ついに社内プレゼンテーションという第一関門を突破することはできましたが、開発チームには、どうしても妥協したくないこだわりがありました。それはチップの形状です。油性ボールペンであるからには、強い筆記に耐えうるコーンチップは外せないと考えていました。これまでパイプチップやシナジーチップに0.3ミリボールを搭載したボールペンはつくってきましたが、コーンチップの0.3ミリはありません。その常識を覆す意味でも、「パイロットなら激細0.3ミリをコーンチップで実現できるんだ」ということを、何としても示したかったのです。

 すでに基礎研究から丸2年が経とうとしたある日、いよいよ商品化へ向けて各所で本格始動しましたが、発売日までもう時間が迫っていました。試作モデルとして少量つくることに成功しても、工場で大量に生産できるようにするのはゼロからのスタートです。工場の生産ラインをつくり上げるのは困難を極め、開発拠点である神奈川県平塚市と、工場のある群馬県伊勢崎市を往復しながら、ミクロン単位で製造機械を調整する日々が続きました。

 ようやく量産する体制が整ったのは、発売日までのカウントダウンが始まろうとしていた頃でした。ギリギリまで粘り続けた開発チームと生産チームの手によって、激細0.3ミリのなめらか油性ボールペン「アクロボール」が遂に誕生したのです。

 こうしてデビューを果たした0.3ミリの「アクロボール」は「なめらかな書き味で濃い筆跡」の激細油性ボールペンとして高評価を得て、現在ではいろいろなタイプを選べるようになり、「アクロボール」シリーズを盛り上げています。

 一見、0.5ミリや0.7ミリと特別な違いは何もなさそうに見えるコーンチップの0.3ミリ「アクロボール」。この超極小チップの裏側にこそ、パイロットの技術と開発者たちの努力の痕跡が刻まれているのです。



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左:激細でありながらも「アクロボール」らしい濃い筆跡を実現。右:パイロットの油性レフィルでは初の0.3ミリ。





製品情報はこちら 〉〉〉「アクロボール」シリーズ

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