2021/11/15
東大卒クイズ王 伊沢 拓司 さん 「 イメージを広げるときに紙に書く作業は欠かせません」
東大卒クイズ王 伊沢 拓司 さん インタビュー
エンタメと知を融合させたメディア「QuizKnock(クイズノック)」編集長をはじめ、株式会社QuizKnockのCEO、タレントなど、まさに八面六臂の活躍をしている伊沢拓司さん。「手で書くことは大事な作業」という伊沢さんにとって、筆記具はどのような存在なのでしょうか。じっくりとお話を聞きました。
「勉強に入り込むルーティンとして、
お気に入りの筆記具を使っていました」
― 中学受験を経て、開成中学校・高等学校で学び、東京大学へ。子どもの頃から勉強ライフを歩んできた伊沢さん。筆記具には、どのようなこだわりがありましたか?
まず小学校のときは鉛筆だったんです。でも、なぜかうちの親は鉛筆削りを買ってくれなくて、小刀で削るように言われて。学校では、みんなきれいに削った鉛筆を持ってきているのに、僕だけ汚く削った鉛筆で......、それが恥ずかしくて、高学年で塾に通うようになってからは、頑なにシャープペンシルを使っていました。
パイロットさんの「ドクターグリップ」のシャープペンシルを初めて手にしたのも、その頃だったと思います。文房具屋さんの店頭でいくつか手に取って試し書きして、ギュッと握れて、しっかりと書けるところが気に入って購入しました。中学校に入ってからも、板書をとるとき、暗記をするとき、すべてドクターグリップを使っていました。
― 高校生になると、何かこだわりが変わりましたか?
高校に入学し、主体的に学ぶようになってからは、製図用のシャープペンシルを使うようになりました。機能性のよさはもちろんありましたが、僕は周りと違うことそのものに喜びを覚えるタイプ。「俺だけ人と違うものを使っている!」ということが勉強へのモチベーションを高める手段になっていました。勉強に入り込むルーティンとして、お気に入りの筆記具を使っていたわけです。
一方、大学受験の勉強では、パイロットさんの1.6mmの超極太ボールペンも使ったりしていました。とにかくパワフルにインクが出たので、大きく書いて覚えたいものに使っていました。世界史の流れなどは流れが大切なので見ながら覚える、漢字や英語のスペルは正確さが大切なので書いて覚える。このボールペンは書きやすいだけでなく、書いた文字を判読しやすいので、世界史の流れの中でも特に大切なところとか、難しい漢字の一部とか、そういうところを書くのに使っていました。大学生になって塾のチューターをしたときも、生徒たちに覚えるときは太いのを使うといいぞってすすめていましたね。
大学に入ってからは、デジタルとアナログの併用。僕は手書きが好きですが、大学の授業はスピードが速いので、手書きだとついていけない。そういうときは板書をワードに打ち込んだり、スライドの写真を取り込んだり......。メモをとったノートをファイルに貼りつけることもあり、授業中はとにかく大忙しでした。
「アイデアを頭の中でまとめようとしても
まとまりません。紙に書くことは大事です」
― 「東大卒クイズ王」としてメディアで活躍しながら、「QuizKnock」のWebメディアやYouTubeチャンネルを運営、今でも書くことはありますか?
新規事業の企画をブレストしたり、人に説明するためにポンチ絵(構想図)を描いたり、講演会や著作のアイデアをメモをしたり……、頭の中にある考えをつなげてまとめたいときや、イメージを広げたいときは、ノートや紙に書きますね。
よく書く場面として思いつくのは、講演会で話す内容を考えるときです。頭の中で考えているだけだと軸がぶれそうになるので、必ず紙に書き出します。たとえば先日、依頼を受けた「東大生向けのキャリア講演会」であれば、「自分がどういう人間になりたいか」という講演のメインテーマをまず書き、その下支えになる具体的なエピソードや根拠を書いて、さらにそれに対する反証や反論を並べて、とノートに内容を組んでいきました。冒頭でどうやってくすぐりを入れて雰囲気をよくしようか、ということまで書いていました。
つい最近、『クイズ思考の解体』(朝日新聞出版)という本を書き下ろしましたが、「なぜクイズ王は早押しが早いのか」というテーマを解説したら、45万字、480ページになりました(笑)。この本を仕上げるために書いたメモは、それこそ膨大。集めた資料にも相当書き込みました。完成した原稿は45万字でしたが、その何倍もの文字数を書いていますね。
思いついたことはノートにどんどん書いていく。仕事のことだけでなく、漢字の書き取りや引っ越しのメモも。
― 今は、どんな筆記具を使っていますか?
読みやすく、大きく、短くというのが僕の書き方なので、太めのサインペンをよく使っています。とにかくアイデアを頭の中でまとめようとしてもなかなかまとまりません。やはり自分の手で書くことで、自分の考えを相対化できる、まとまったものになるという感覚が出てきます。
― クイズを考えるときは、手では書かないのですか?
クイズの問題を作成するときは、デジタルツールを使っていますね。一度書いただけではベストではないので、足したり引いたり、比較検討したりして、何パターンも作ってみます。その作業をするときは、デジタルツールが早くて便利ですね。
しかしながら、デジタルツールには文字数やサイズに制約があります。クイズの問題を作るには適していますが、イメージがどこまで広がるかわからない、しかもその広がり方が不規則なものに対しては、やはり紙は強い。紙に書くことは、面的に広げていけますから。机一面に広げて書き出したり、書いたものを壁に貼り出して一覧できるようにしたり、僕にとって「書く」ことは、イメージを形にすることとイコールであり、すごく大事にしている作業です。
好きな筆記具を使うと気分が上がるという伊沢さん。QuizKnockのコンセプトである「楽しいから始まる学び」を万年筆で試し書き。
「コラボシャープペンシルは、
オリジナルすぎるぐらいオリジナル」
― 今回、パイロットの「ドクターグリップ」発売30周年を記念して『ドクターグリップ30周年記念BOOK』(主婦の友社)が発売され、特別付録にQuizKnockとのコラボレーションシャープペンシルが付きました。このシャープペンシルのおすすめのポイントを教えてください。
まずシャープペンシルは、早押しボタンのイラストや“Fun in Learning”というメッセージなど、QuizKnockらしい意匠をあしらったものになっています。“Fun in Learning”というのは、僕がもともと作った「楽しいから始まる学び」というコンセプトを英単語であらわしたもの。シャープペンシルという狭いフィールドの中で、いかに我々の伝えたいメッセージをのせるかというところで苦心して出てきた表現です。
ビビッドなカラーでポップなところは、オリジナルすぎるぐらいオリジナルに仕上がったのではないでしょうか。僕が学生時代に筆記具でモチベーションを高めていたように、このコラボシャープペンシルが勉強のモチベーションが上がるツールになってもらえたらという思いもあって、QuizKnockらしさは大事にしました。
なおかつ機能性は「ドクターグリップ」のシャープペンシルのままというのも、大きなポイントです。書くときは頭で考えたことを、いかにスピーディに紙に落とすかが大事なので、振るだけで芯が出るフレフレ機構や芯の折れにくい機構は、ストレスフリーで使えて最高です。
― 『ドクターグリップ30周年記念BOOK』にはQuizKnockのメンバーのインタビューが載っていますね。この冊子の読みどころを教えてください。
読みどころは全部ですね。冊子には、メンバーたちの筆記具への思いやコラボシャープペンシルを使ったインタビューが載っていますが、これがびっくりするほど、みんな意見がバラバラ。使い方も感じ方も、それぞれで違うんです。だから、これを読むだけで、自分に合った使い方を見つけられればいいんだなということがわかりますし、また使い方に迷っている人は、メンバーの使い方からヒントを得てもらえたらいいなと思います。
― 今後、伊沢さんがしたいことは?
大変な本を出したばかりなので、しばらくは趣味に時間を使いたいですね。本を読む、音楽を聴く、映画を観る、スポーツを観戦する……、そういったことに時間を割いて、クイズだったり、日常生活全般に還元していきたい。そうやって、また書くことを溜めていくということです。書くことは、僕にとって究極的には手段。自分が表明したいことや他人に訴えたいことがあって初めて「書く」ということが効いてきます。目指すゴールはそこなので、またいろいろな経験を積んで、少しずつ書くことを増やしていきたいと思っています。
伊沢 拓司 さん 東大卒クイズ王
1994年生まれ。私立開成中学校・高等学校、東京大学経済学部卒業。中学時代より開成学園クイズ研究会に所属し、高校時代には全国高等学校クイズ選手権史上初の個人2連覇を達成。株式会社QuizKnock代表(CEO)として、「楽しいから始まる学び」をコンセプトに動画や記事を発信するかたわら、YouTuber、起業家、タレントとして多数のメディアで活動中。
QuizKnockの公式サイトはこちら 〉〉〉〉QuizKnock
『ドクターグリップ30周年記念BOOK』QuizKnock 監修 人気シリーズ「ドクターグリップ」の発売30周年を記念し、「楽しいから始まる学び」をコンセプトにエンタメと知を融合させる伊沢拓司さん率いる東大発の知識集団QuizKnockとコラボレーション。「ドクターグリップ」の30年の軌跡を振り返る詳細なヒストリーや開発秘話、そしてQuizKnock各メンバーから読者への挑戦状としてここだけの濃厚な試験問題も掲載。特別付録は、本気で勉強する人たちをサポートする、オリジナルシャープペンシル。 主婦の友社 1,320円(税抜価格1,200円) |
『クイズ思考の解体』伊沢 拓司 著 クイズ王はクイズを解くときに何を考えているか、その思考過程を解剖した「クイズのために書いたクイズの本」。クイズの歴史をはじめ、早押しクイズの分類とテレビへの応用、クイズ思考とクイズ文化など、クイズのすべてを480ページにわたり解説した超大作となっています。クイズプレーヤーはもちろん、クイズ愛好者もぜひ手に取りたい一冊。 朝日新聞出版 4,950円(税抜価格4,500円) |
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